深夜二時過ぎ、士郎の眠る部屋に向かって足音を消しながら何かが進んでいく

部屋の前まで来るとゆっくりとドアを開ける

ドアが動いた瞬間、眠っていたはずの士郎は目を開けた

殺気を感じたとかではなく、それくらいできなければ生きてはいけないのだ、赤い魔女の元では

影はゆっくりと士郎に向かって歩いてくる、士郎も既に起き上がっており、いつでも動ける状態だ

士郎の前まで来た影は、士郎に外に出ろと指で合図してくる

その影の正体はちょっぴり焦げたアーチャーだった





温泉旅行に行こう




最終話




士郎はアーチャーの後を追い、旅館を出た

雨は既にやんでおり、空には綺麗な星が輝いている

旅館から数分、着いた所は開いた空き地だった

看板が刺さっており、そこには『――旅館増築予定地』とある


投影・開始トレース・オン

アーチャーは黒弓と剣を四本投影し、それらを四方に打ち出した

剣が地面に刺さった瞬間、士郎とアーチャを中心とした結界が展開される

その結界は大きく、半径二十メートル近くあった


「・・・・・・アーチャー、一つ聞きたいんだが何のつもりだ?」


士郎はゴクゴク普通の質問をする

旅館からも離れ、一面開いた場所しかも結界まで展開してあれば戦闘が始まるという事は士郎もわかっているのだが

いかんせん理由が理解できない

士郎をぼこって凛の前に持っていき、「こいつも一緒に覗いていた」といっても今更信用はされないだろう

むしろアーチャーが士郎を巻き込もうとしていると思われかねない、そんなことになればお仕置きは更なる進化を遂げるだろう


「ふっ・・・決まっているだろう、八つ当たりだ!!


アーチャーは言い切った、それはもう見ていてすっきりする位に


「大体今更言い訳しても仕方が無い事くらいわかっている・・・がしかしお前だけ何もないというのも許せん!!」


アーチャーは両手に夫婦剣――干将莫耶をいつの間にか持っており、既にそれを士郎に向かい構えている

士郎もアーチャーと同じ剣を投影し構える、待っていたのかアーチャーは士郎が剣を構えるのを確認してから士郎に向かった


「破ッ!!」


「ちぃ!!」


アーチャーは素早く二刀で士郎に切りかかる、その技術は性格で休み無く干将・莫耶は士郎を襲い続ける

通常の人間対英霊なら、もう既に決着は着いているだろう、魔術師であっても真正面から向かうなど余程の奇策が無ければありえない

が士郎は干将・莫耶からのアーチャーの経験を理解することのよってそれらを防ぎ続ける、無論体は強化してある


一合、三合、八合、二十合―――――


いつまでも続くかと思われていたこの打ち合いが徐々に変化してきた

士郎が段々と押されているのだ

いくらアーチャーの剣技を模倣していても体は人間基本性能スペック が人間とは違いすぎる

遂にはついていけなくなり、士郎に多少の隙ができた


「・・・フッ!!」


アーチャーはその隙を見逃すはずも無く、鋭い蹴りを士郎の腹に叩き込んだ


「くっ・・・」


士郎は盛大に吹っ飛ぶ、それはアーチャーの蹴りの威力のためではなく、自分で蹴りの威力を少しでも減らすために飛んだのだ

しかしそれこそがアーチャーの狙い


――I am the bone of my sword我が骨子は捩れ狂う


士郎がその声を聞いた時には既に螺旋状の剣は放たれていた

空間を切り裂きながら一直線に士郎に向かってくる偽・螺旋剣カラドボルグ

士郎は避けようにも、体勢を崩しているので完全にはよけ切れない、かすった時に『壊れた幻想』を喰らえば終わりだ

だから避けれ無いのだから防ぐしかない、そしてそのための防具を投影した


熾天覆う七つの円環!!ローアイアス


士郎の手から七枚の花弁のような盾が開いて、偽・螺旋剣を防ぐ

しかし士郎のローアイアスは一枚ずつ崩れていく



「くそっ・・・」


「ふっ・・・壊れた幻想ブロークンファンタズム



激しい爆音と共に一気に残っていた熾天覆う七つの円環が破壊された

爆発で辺りの砂が待っていて両者の視界をさえぎっている

幸い士郎にはダメージは少なかったので、視界が悪いこの状況を利用して撤退しようとしていた


(これは逃げるんじゃない、戦略的撤退だ)


士郎が結界を破壊するために破戒すべき全ての符ルールブレイカーを投影しようとした時に何かが士郎に向かって飛んできた


「何っ!!」


飛んできたのは四本のロングソード、慌てて身をそらすが2発は左手とわき腹に命中した


(・・・戦略的撤退は不可能か、なら!!)


投影、重装トレース・フラクタル


士郎が投影したのは黒鍵を二本、しかしその刀身は血の様に紅い

それをアーチャーに向かって投擲する


刺し穿つ死棘の黒鍵ゲイボルグ !!」


さっきとはまったく逆の状況で、一直線にアーチャーに向かっていく二本の紅い黒鍵

既に土ぼこりは収まっており、アーチャーにも黒鍵が視界に入っている


投影・開始トレース・オン


アーチャーはそれを見るや否やローアイアスを展開する

ローアイアスに紅い黒鍵が当たった瞬間、カランという音と共に黒鍵が弾かれる


「はっ・・・・・・」


果てし無き蒼ウィスタリアス!!


声の先には士郎が腰に届くであろう白い髪をなびかせて立っていた











(士郎視点)



アーチャーはどうやら本気で俺を痛めつけるようだ

徐々にだが俺に傷をつけていく

さっきのロングソードも『壊れた幻想』を使えばかなりの傷を負っていただろう

それをしないという事はじわじわと痛めつけるつもりなのだろう

正直英霊(しかも自分の一つの終着点)に一対一で勝つには今の所『果てし無き蒼』ぐらいしか思いつかない

があれにも欠点がある

まず一つは明日に差し支える、もし使えば明日が一日中体が悲鳴をあげることになるだろう

もう一つは投影するのにはかなりの魔力を使うということだ時間、

最後は投影事態は問題ないがあれは鞘から抜剣しなければならない

普通なら問題は無いのだが、相手が人外となれば話は別、鞘から抜く前にやられる可能性がある

つまりは時間が必要、がしかし二つ目の条件により、もう宝具の投影は不可能だ

だから俺はゲイ・ボルグの色だけを黒鍵に付与する、ばれたら終わりだがそれはそれ


投影、重装トレース・フラクタル


真紅の黒鍵を創り、それをアーチャーに向かって投擲する

アーチャーはローアイアスを投影し防ごうとした


(引っかかった)


投影・開始トレース・オン


創造の理念を鑑定し、

基本となる骨子を想定し、

構成された材質を複製し、

製作に至る技術を模倣し、

成長に至る経験に共感し、

蓄積された年月を再現し、

あらゆる工程を凌駕し尽し―

ここに、幻想を結び一振りの剣と成す―!



手には鞘に入った一振りの剣がある、もうほとんど魔力は残っていないがそれも抜剣すれば何とかなる

アーチャーのほうを見ると黒鍵を弾いて呆然としている

チャンスは今しかない!!


果てし無き蒼ウィスタリアス!!


大地――否、世界から魔力が流れ込んでくる、

さっきアーチャーに付けられた傷も既に回復している

俺は剣を構え、アーチャーのほうを向いた









「ふん、またそれか」


アーチャーは士郎を見てそう言う、普通なら負け惜しみと見るがアーチャーには何処と無く余裕がある


「アーチャーもうやめろ、こんなことをしてなんになるんだ」

「貴様に言われなくてもわかっている」

「だったらどうして・・・・・・」

「最初にも言ったがただの八つ当たりだ」


やっている事はシリアスっぽいが事の始まりは覗きだと思うと虚しくなる


「さてそろそろお喋りは終わりだ、投影・開始トレース・オン


呪文と共にアーチャーの手に現れる一振りの剣


「なっ!!それは」

「ふっ・・・それがいつまでも貴様の専売特許だと思うなよ」


そうアーチャーが手に持っているのは士郎と同じウィスタリアスだった


「そんな、どうして・・・・・・」

「なに私もかの作品をプレイしただけだよ
 
 凛が学校にいっている間や、家事の合間にね、そのせいで少々時間がかかってしまったがね」


士郎は思わずアーチャーの言葉に目頭が熱くなる

未来の俺は隠れなきゃゲームすらできないのかと・・・


「さてそれでは・・・」


アーチャーは鞘から剣を抜剣使用とする


「くそっ、させるか」


士郎はアーチャーに向かって駆け寄るが、少々距離があったために間に合わない


果てし無き蒼ウィスタリアス!!


アーチャーの姿は銀色の髪が白くなり、髪が腰ぐらいに目で伸びている

士郎と背丈以外はまったくそっくりだった


「さて思いのほか楽しめたがもう終りにしよう」


そう言ってアーチャーは剣を上段に構え魔力を集中させる

士郎も少し遅れてアーチャーと同じ動作をする

果てし無い魔力が2人の剣に集っていく

刀身は目がくらまんばかりに蒼く輝いている


「「いくぞっ!!」


そして2人はまったく同じタイミングで剣を振り下ろす

エクスカリバーに勝るとも劣らない閃光がぶつかり合う


「うううおおおおぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁ!!!」


「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


2人の中心で閃光がぶつかり激しく凌ぎあう、その余波は凄まじく辺りの木は激しくゆれる

それからすぐにお互いの放った閃光は相手を掠めるようにし2人の後方へと飛んでいく


「やるな」

「お前こそ」


2人はもう一度構え、魔力を集中させる


「これで終わりにするぞ」

「ああ」

「あんたらこんな夜中にんいやってんのよ!!!」

約束された勝利の剣エクスカリバー!!



剣を振り下ろそうとした瞬間、2人を衝撃と閃光が襲う

結界はとか思ったりもしたが、結界なんぞウィスタリアスを士郎が抜剣した時点で吹っ飛んでいる

2人が意識を失う前に思ったのは世界には決して勝てないものがいるだったそうな






後日談

ウィスタリアスから放ちそれていった一撃は片方は山をぶち抜き、もう片方は旅館の一部を吹っ飛ばした(幸い死傷者は零)

その修繕費代わりとして士郎とアーチャーが置いていかれたのだが、何故かいつまでも帰ってこない二人

ふと凛たちがテレビを見ていたときに『特集:今流行の旅館』で板長として2人を見て速攻で攫い迎えに行った

なお旅館での2人は凄まじく幸せだったそうな



終わり










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